地方公共団体の特定の事務の郵政官署における取扱いに関する法律

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　「地方公共団体の特定の事務の郵政官署における取扱いに関する法律案」は、「地方公共団体と郵便局の協力体制のあり方についての研究会報告」などを元に、第151国会に閣法65号として、2001年3月9日に提案されました。その後、会期終了により衆議院で閉会中審査扱いになっていましたが、第153国会において可決成立（2001年11月9日）し、2001年12月1日に施行されました。
　これにより、自治体と郵政事業庁長官との協議により規約を定め（議会の議決が必要）、次ぎに掲げる事務を郵便局において取扱うことができるようになります。
　1.戸籍の謄本、抄本等
　2.納税証明書
　3.外国人登録原票の写し及び外国人登録原票記載事項証明書
　4.住民票の写し及び住民票記載事項証明書
　5.戸籍の附票の写し
　6.印鑑登録証明書
の交付の請求の受付及び写し・証明書の交付事務（本人請求に係るもの）。
　また、郵便局の職員が、これらの事務に関して知り得た情報をこの事務の取扱い以外の目的に利用することを防止するために、郵政事業庁長官は必要な措置を講じなければならないとしています。
　一方、郵便事業の民営化を押し進めると、小泉首相は宣言（第151回国会における小泉内閣総理大臣所信表明演説）しています。郵便事業が民営化されれば、郵便局は一民間企業（金融機関＋保険業＋宅配業）の支店か営業所になります。こうした支店や営業所に戸籍や住民票、納税証明などの極めてプライバシーにかかわる情報を取扱わせて良いものなのでしょうか。また、郵便局が良いのなら、なぜ銀行はダメなのか、生命保険会社はどうなのかと議論が起きるかもしれません。さらに、銀行がOKになれば、これからどんどんATMが置かれ、事実上、銀行の一部と化すコンビニエンスストアにもやらせろとエスカレートする可能性もあるでしょう。それに、コンビニエンスストアは、今でも、郵便（小包）と競争を繰り広げている宅配業の営業所ですから、郵便局とコンビニエンスストアの違いを理屈付けるのはたいへんかもしれませんね。
　なお、法案は附則で、郵便法、総務省設置法など関連法の改正もうたっており、これにより、「地方公共団体と郵便局の協力体制のあり方についての研究会報告」でニーズが高いとされている郵便局での公営バスの回数券販売や公共施設の利用申込みの受付け、また郵便局員による高齢者宅への立ち寄り・声かけや日用品の配送、公立図書館の図書の配送・返送などのサービスの提供が可能となります。

　ところで、この法案の趣旨について片山虎之助総務大臣は「第１回郵政三事業の在り方について考える懇談会」で次のように述べています。

　我々の推進している市町村合併が進めば、住民から役場の距離が遠くなる。そこで、郵便局でワンストップ・サービスを行い、住民票の写しや証明書がもらえるようにする法案を提出している。

　本音は、こんなところにあったのですね。予想はしていましたが。
　なお、郵政行政統計月報によれば全国の郵便局の数は、2001年9月末現在、

だそうです。
　

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• 地方公共団体の特定の事務の郵政官署における取扱いに関する法律案（衆議院サイト内）
  　
• 「地方公共団体と郵便局の協力の推進」
  　全国町村会の機関紙「町村週報」のバックナンバーの第2352号（2001年4月9日）（PDF形式につき注意）に掲載されている前総務省自治行政局自治政策課理事官・前葉泰幸氏の「地方公共団体の特定の事務の郵政官署における取扱いに関する法律案」の解説です。
  　これによれば、実際の手続は「郵便局においては、利用者から請求書を受け付け、請求書をファクシミリ等により地方公共団体に送信する。地方公共団体においては、郵便局から送信された請求書を審査の上、証明書を作成し、電子公印のデータとともにファクシミリ等で郵便局に送信する。郵便局では、受信した証明書（公印が押印されたもの）を利用者に渡すとともに、手数料を受領する」となるそうです。
  　証明書を送るためには、細かな字まで鮮明に印字できるかなり優秀なFAXが必要（メンテナンスも）だと思いますが、実際にはオンライン（電子メールなど）が利用されるのでしょうね。だいたい法案自身には、FAXでするとも、オンラインでするとも、実施の方法に付いては一切触れていないわけですから、法律さえできてしまえば、後は何とでもなるのでしょう。
  　2003年には相互接続される総合行政ネットワークと霞ヶ関WAN、これに郵便局のネット（郵政統合通信ネットワーク［P-NET］）をつなげは、オンラインは完成。「FAXよ、さようなら」です。もっとも、住民票だけなら、住民基本台帳ネットワークの端末を郵便局に設置する手もあります。これなら、請求されたら即出せるし、空いた時間に顧客拡大の資料も（見つからないように密かに）作れるし、一石二鳥だ。ついでに住民基本台帳ネットワークのICカード（おそらく住民票などの証明の受領時に、本人確認のため提示することが必要になるでしょう）に、郵便貯金のキャッシュカードの機能を載せれば一石三鳥だ。・・・・・参考　郵便貯金ICカード実証実験
  　

　自治体の対応　

• 郵便局での住民票引き渡し、来年にも長野県の２市１町で
  　「地方公共団体の特定の事務の郵政官署における取扱いに関する法律」の2001年12月1日施行に際しての、11月30日付けの朝日新聞の記事です。

  　郵政事業庁は30日、岡山市、長野県の茅野市と高森町の２市１町の郵便局で来年、住民票の写しなど市町村の業務の一部代行を始める見通しになったと発表した。・・・・・・・・同庁は「他にも検討している地域があり、今後、代行業務を始める郵便局は広がる」とみている。
  　・・・・・・茅野市は来年４月から10郵便局で、高森町は来年３月までに4郵便局で住民票の写し、戸籍謄抄本、納税証明書、印鑑登録証明書の受け渡しを始める。岡山市は4郵便局程度で住民票の写しの引き渡しなどの業務を早急に代行させるための準備を進めている。
  　このほか郵便局でのゴミ袋やゴミ処理券、バス回数券の販売などの代行販売も可能となり、これらを含めると33市町村、134郵便局で何らかの代行業務の準備が進められているという。

  　
• ワンストップサービスが本格化＝郵便局で住民票、１日法施行
  　同じく、2001年11月30日付けの時事通信。

  　既に全国の自治体で準備が本格化しており、住民票の写しの交付などを行う予定の長野県茅野市と同高森町は、12月議会での議決を経て実施する方針。岡山市も早急に対応する考えだ。
  　・・・・引用者略・・・・全国に約２万カ所ある普通郵便局と特定郵便局が対象。・・・以下略

  　
• ４月１日から、郵便局での各種証明書の交付が始まります（茅野市）
  　2001年4月1日から郵便局での各種証明書の交付が始まることを伝える茅野市Webサイト内のページ。
  　岡山市と同様に、2001年12月19日、市役所８階大ホールにて、「茅野市の特定の事務の郵便官署における取扱いに関する規約」「茅野市の特定の事務の郵便官署における取扱いに関する協定」の締結式が行われたそうです。どうも郵便局の関係者のみなさんは「式典」がお好きなようです。
  　
• 長野県の郵便局で、住民票発行サービスを開始
  　長野県下伊那郡高森町の４郵便局で、21日、全国のトップを切って、住民票の写し、戸籍謄本・抄本、印鑑登録証明書、所得証明書、納税証明書の受付・発行サービスが開始されたことを報道する Japan.internet.com の2002年1月22日付けの記事。
  

  　・・・・引用者略・・・・。
  　取扱時間は、平日の午前9時から午後5時まで。手数料は、役場で手続きする場合と同一金額となっている。手続きは、まず、郵便窓口に、記入済みの証明書等交付書請求書（用紙はウエブサイトからダウンロード可能）を提出し、それを、郵便局員が専用ファックスで役場に送る。役場では、請求に基づき、デジタル化された証明書を端末に呼び出し、その時点で、「電子公印」をうち、LAN上にあるファックスサーバーを経由して、役所から郵便局に証明書をファックスする仕組みとなっている。

  　
• 高森町の郵便局で住民票等を交付するサービスが始まります
  　「高森町では、町民の皆さんの利便を図るために、全国で最初に郵便局で住民票・戸籍証明書・印鑑証明書・税証明書の受付・発行するサービスを開始しました」と請求方法などを説明する長野県下伊那郡高森町Webサイト内のページ。証明書等交付請求書（郵便局用）が、PDFファイルで提供されています。
  　
• 郵便局でも取り扱います　町営バス回数券やごみ袋の販売　　海津町と谷汲村の６郵便局　町村と委託契約
  　岐阜県揖斐郡谷汲村と村内２郵便局との間でごみ袋の販売委託契約が、同海津郡海津町と町内４郵便局との間で町営バス回数券の販売委託契約が結ばれたことを報じる2001年12月5日付けの岐阜新聞。
  　「郵政事業庁によると11月30日現在、全国33市町村との間で、134郵便局で取り扱いが予定されている」とも。
  　
• 郵便局での岡山市証明書交付について
  　岡山市Webサイト内にある「・・・・・高齢者の方をはじめとする市民の皆様の利便性の向上を図るため、市内中心部を除く人口密集地や利用の増加が見込まれる地域でかつ現在証明書等を発行する窓口がない地域の郵便局において、市の取り扱う事務の一部である住民票等証明書の請求の受付及び交付の事務を取り扱うこととし、その取扱に関する協定書の調印式を行いました」とする2002年1月21日付けの「岡山市のＩＴ NEWS#015」。
  　取扱開始日は2002年3月1日。これは「市としては全国で最も早いもの」だそうです。同ページには、取扱事務内容や、取扱時間、取扱方法などの説明があります。
  　また、2001年12月27日にメルパルクOKAYAMAにて、 証明書交付事務委託推進協議会の主催で、調印式も開催されたとのこと。
  　
• 新見の郵便局でごみ処理券販売
  　新見市が、新見市内の新見郵便局と特定郵便局11局が、12月3日、新見市の委託を受けて粗大ごみ処理券の販売を始めたとを報じる2001年12月4日付けの中国新聞地域ニュース。

  　・・・・引用者略・・・・。
  　同市は今年七月から、粗大ごみの戸別収集処理を有料化。市民課と八カ所の市民センターで、手数料（二百〜二千円）納付と引き換えに処理券を発行している。月平均百七十枚の利用がある。
  　新たに郵便局も処理券の販売窓口となったことで、市役所から遠い地域や市民センターの設置されていない地区住民の利便性が向上する。市は十二局で月二十件の取り扱いを見込んでいる。
  　・・・・引用者略・・・・。
  

• 郵便局で回数券　尾道で販売開始
  　尾道市が12月3日、市内にある普通・特定の全19郵便局で、市営バス回数券の委託販売を始めたことを報じる2001年12月4日付けの中国新聞地域ニュース。

  　・・・・引用者略・・・・。
  　市は千五百〜三千円の七種類の回数券販売を、一冊につき五十九円八十五銭の手数料で委託した。市営バスは、昨年度の営業収益が前年度比６・５％減。市中心部の商店や病院の二十六カ所で続けている委託販売を、郵便局の窓口を通して市内全域に広げ、バス利用者の増加を狙っている。
  　亀田良一市長は「地方の住民にとって、郵便局は身近な場所の一つ」と言い、市との調印式に臨んだ尾道道郵便局の守屋俊樹局長は「市営バスの回数券販売で、郵便局の役割が一段と高まると思う」と期待していた。
  　中国地方では、新見市の粗大ごみ処理券、島根県八束町のごみ袋なども含め二市六町が、地元の計五十一郵便局に事務を委託している。

• 郵便局でごみ袋販売
  　鳥取県関金町、東郷町、郡家町、日南町の14の郵便局で町指定のごみ袋の販売を開始すると報じる2001年12月3日付けの日本海新聞ニュース。
  

  　・・・・引用者略・・・・。
  　・・・・関金町では来年四月、山守支所を廃止し、納税証明書や印鑑登録証明書などの交付事務手続きの一部を山守郵便局に委託することを決めている。
  　中国郵政局企画課は「法律の施行で、住民の皆さんへのサービス拡大がこれまで以上に図れる。郵便局のネットワークを他の自治体にも活用してもらいたい」としている。

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